ラジオ体操のメロディー

ラジオ体操

微かなラジオ体操のメロディー

暑い一日になりそうだった。
周りの家並みはまだ静かに眠り、
聴こえるものと言えば時折の電車のレールのきしみと、
微かなラジオ体操のメロディーといったところだ。

―村上春樹,風の歌を聴け

ようやく物語の中で音楽が流れ出したけど、
最初が『ラジオ体操のメロディー』というのがまあなかなか面白い。

ラジオ体操のメロディーといえば、
あの『新しい朝が来た 希望の朝だ…』の『ラジオ体操の歌』が先ず出てくる。

ラジオ体操の歌は3曲ある

ラジオ体操の歌というと、
藤山一郎とコロムビアひばり児童合唱団の現在も流れている歌しか出てこない。

でも、
実は初代二代目があってこれは三代目なのだ。

ラジオ体操の歌
  • 初代 1931年(昭和6年)7月
    作詞:小川孝敏
    作曲:堀内敬三
     歌:内田栄一
    演奏:日本ビクター管絃楽団
  • 二代目 1951年(昭和26年)9月
    作詞:脇太一
    作曲:大中恩
     歌:藤山一郎 / コロムビア合唱団
    演奏:コロムビアオーケストラ
  • 三代目 1956年(昭和31年)9月-
     作詞:藤浦洸
     作曲:藤山一郎
      歌:藤山一郎 / コロムビアひばり児童合唱団
     演奏:コロムビアオーケストラ

ラジオ体操も3曲ある

そして、
ラジオ体操自体も第1.2それぞれ現在三代目なのだ。

その上更に、
第3体操もあったのだ。

ラジオ体操

【ラジオ体操第1】

  • 初代 1928年(昭和3年)11月1日 – 1946年(昭和21年)4月13日
    作曲:福井直秋
  • 二代目 1946年(昭和21年)4月16日 – 1947年(昭和22年)8月31日
    作曲:服部正
  • 三代目 1951年(昭和26年)5月6日 –

【ラジオ体操第2】

  • 初代 1932年(昭和7年)7月21日 – 1946年(昭和21年)4月13日
    作曲:堀内敬三
  • 二代目 1946年(昭和21年)4月14日 – 1947年(昭和22年)8月31日
    作曲:深海善次
  • 三代目 1952年(昭和27年)6月16日 –

【ラジオ体操第3】

  • 初代 1939年(昭和14年)12月1日 – 1946年(昭和21年)4月13日
    作曲:橋本國彦
  • 二代目 1946年(昭和21年)4月16日 – 1947年(昭和22年)8月31日
    作曲:橋本國彦

朝日を浴びて

初代ラジオ体操第1の曲には、
実は歌詞が付けられていた。

作詞は武内俊子で、
1939年(昭和14年)に発表された『朝日を浴びて』だ。

朝風そよそよ ラジオは響く一二三
大人も子供も 輝く太陽仰いで
今 光と大気に
湧き漲る 血潮よ
銃後の護りだ われ等の身体鍛えん

―武内俊子: 朝日を浴びて

銃後の護りって、
要は軍隊が消費する資源・物資の供給を支えることで戦争遂行と勝利支援するという考え方だ。

つまりは、
そういう時代だったわけだ。

そして、
そういう時代は国民体力向上と健康保持・増進の目的を歪めてしまうのだ。

ラジオ体操=突撃隊

さて、
『ラジオ体操』と言えば『ノルウェイの森』に出てくる『突撃隊』が思い浮かぶ。

僕ことワタナベ・トオルの学生寮のルームメイトで、
朝から部屋の中でラジオ体操をするのが彼だ。

国土地理院に入ることを目指して、
地理学を勉強している学生。

僕に蛍をくれたのは、
彼だった。

そんな突撃隊は夏休みが明けて大学が再開されても、
山梨の実家から戻ってこなくて消えてしまう。

そういえば『1973年のピンボール』で、
僕にベッドをくれた学生が出てくる。

地方の金持ち息子で大学で別のセクトの連中に殴られ作業靴で顔を蹴られ、
目を悪くして大学をやめて田舎に帰った学生。

もしかすると、
その学生って突撃隊だったりするのかもしれない。

ラジオ体操の歌=GANTZ

そして、
今となっては『ラジオ体操の歌』は『GANTZ』で流れるあの感じなのだ。

てめえ達の命は、
無くなりました。

新しい命を
どう使おう と
私の勝手です。

という理屈なわけだす。

―GANTZ

ある映像で流れる音楽が、
それ以来その映像の強烈なインパクトによって音楽そのものの印象を大きく変えてしまうことがある。

これも、
まさにその1つだ。

体操 関連の曲

ところで『体操』がタイトルに付いている曲って、
何かあったかな?

イエロー・マジック・オーケストラ: 体操

で思い出したのが、
イエロー・マジック・オーケストラのそのまま『体操』だ。

YMO6枚目のアルバム1981年リリースの『TECHNODELIC』の収録曲で、
B面『手掛かり(Key)』と共にシングル・カットされている。

A面作詞は坂本龍一、
作曲は坂本龍一 / 高橋幸宏。

B面作詞は細野晴臣 / ピーター・バラカン、
作曲は細野晴臣 / 高橋幸宏。

TrackTitleWritten by
A体操(Taiso)坂本龍一、高橋幸宏
B手掛かり(Key)細野晴臣、高橋幸宏
Label: Alfa Catalogue: ALR-751 Date: 21 Feb 1982

この曲のPVは、
結構クセになる。

RC サクセション: 体操しようよ

そして、
RC サクセションの『体操しようよ』。

1990年、
RC4枚目のアルバム『PLEASE』の収録曲。

2018年、
映画『体操しようよ』の主題歌にもなっている。

カウント・ベイシー: Gymnastics

カウント・ベイシー、
1964年のアルバム『Basie Land』の収録曲『Gymnastics』。

Gymnasticsって、
体操だよね?

まあどのあたりが体操なのか?
はよくわからないけど。

おまけ

夏休みともなれば、
スタンプカードを首から下げて近くの公園に行ったものだ。

今で言えば、
ログイン・ポイントみたいなものだ。

眠い目をこすってラジオ体操に参加すれば、
ハンコをカードに押してもらえる。

体操がしたいわけではない、
ハンコが欲しいのだ。

そして、
最終日には景品がもらえたはずだ。

たいした景品じゃあなかったはずだけど、
そんなことが嬉しかった。

学校が休みでも、
朝早くから近所の友達と会えるのが楽しかった。

何十年も昔々の夏休みの思い出として、
今もそんなふうに思い出すっていうことはそれなりに面白いイベントだったのだ。

ある意味、
イベントの選択肢のない貧しい時代だったのかもしれない。

今はどうなんだろう?
同じような感じなんだろうか?

それとも、
もうそんなシステムは崩壊してしまったんだろうか?

公園近くの家の人にとってみれば、
毎朝まだ眠っている時間にラジオ体操のメロディが鳴り響いたら迷惑かもしれない。

昔が寛容だったのか?今が神経質すぎるのか?
はわからない。

それに時代時代でイベントなんて変わるから、
今もラジオ体操が子どもたちの夏休みの定番として続けば良いのにとまでは思わない。

だけど、
同じような気分が味わえるイベントがそうあるとも思えない。

ラジオ体操 関連 Playlist

最後は、
ラジオ体操 関連のプレイリストで。

8曲、
28分9秒。

01 藤山一郎:ラジオ体操の歌
02 柳川英麿 / 大久保三郎: ラジオ体操 第1 – 指導入り
03 柳川英麿 / 大久保三郎: ラジオ体操 第2 – 指導入り
04 井上辰樹 / 前田健治: ラジオ体操 第3 復刻版 – 指導入り
05 イエロー・マジック・オーケストラ: 体操
06 イエロー・マジック・オーケストラ: 手掛かり
07 RC サクセション: 体操しようよ
08 Count Basie: Gymnastics

村上春樹: 風の歌を聴け で流れる他の音楽たち

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