ジューク・ボックスに次々にかかるレコードをただぼんやり聴いていた
僕たちはカウンターに戻り、
―村上春樹,風の歌を聴け
ビールとジム・ビームを飲んだ。
そして殆ど何もしゃべらず、
黙り込んだまま
ジューク・ボックスに次々にかかるレコードをただぼんやり聴いていた。
「エブリデイ・ピープル」、
「ウッドストック」、
「スピリッツ・イン・ザ・スカイ」、
「ヘイ・ゼア・ロンリー・ガール」……。
ここではジューク・ボックスで次々にかかる、
というわりに4曲のタイトルだけが出てくる。
これらの曲は勝手に流れるわけではなく、
誰かがコインを入れて選んだ曲のはずだ。
わざわざお金を払って聴くだけの価値があある曲、
かどうかは好みだろうけどなかなかステキな選曲だ。
Sly & The Family Stone: Everyday People
最初の『Everyday People』は、
スライ&ザ・ファミリー・ストーン。
1968年のシングルで、
翌年の1969年リリースの4枚目のアルバム『Stand!』にも収録された。
曲を書いたのは、
B面の『Sing A Simple Song』と共にシルヴェスタ・ステュワート。
これは、
スライ・ストーンの本名。
Track | Title | Written by |
A | Everyday People | S. Stewart |
B | Sing A Simple Song | S. Stewart |
Billboard Hot 100では、
4Wに渡って1位に輝いている。
Different strokes for different folks
歌詞に出てくる『Different strokes for different folks』は、
ヘビー級王者だったモハメド・アリの言葉。
相手によってそれぞれ違うパンチの打ち方があるのさ、
って感じか。
Different strokes for different folks
―JS. Stewart: Everyday People
And so on and so on
And scooby dooby dooby
Oh sha sha
We got to live together…
民族が違えばやり方だって違うんだ
ああだこうだ
いろいろ
あれこれ
オレたちはみんな一緒に生きなきゃいけないんだ…
Different Volks for different folks
この『Different Volks for different folks』は、
1974年のフォルクスワーゲンの広告のコピー。
人にはそれぞれのフォルクスワーゲン、
って感じなんだろう。
これはまさに『Different strokes for different folks』が、
元ネタに違いないがセンスが良い。
Aretha Franklin: Everyday People
さてオリジナルが良すぎるから、
何かカヴァーをといってもね。
そうは言ってもアレサ・フランクリンのカヴァーは、
やはり良い。
1991年、
アルバム『What You See Is What You Sweat』の収録曲。
彼女自身が書いた『You Can’t Take Me For Granted』をB面に、
シングル・カットもされている。
Track | Title | Written by |
A | Everyday People | Sly Stone |
B | You Can’t Take Me For Granted | Aretha Franklin |
Crosby, Stills, Nash & Young: Woodstock
2曲目は、
クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングの『Woodstock』。
クロスビー・スティルス・ナッシュにニール・ヤングが加わった、
1970年クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングの1stアルバム『Déjà Vu』収録曲。
We are stardust, we are golden
―Joni Mitchell: Woodstock
We are billion-year-old carbon
And we’ve got to get ourselves
Back to the garden…
私たちは星屑で黄金色に輝く
何十億年も旅をしてきた炭素の一粒
そして私たちは自分を取り戻して
楽園に帰るのだ…
リード・ボーカルは、
スティーヴン・スティルス。
アルバムのリード・シングルとして、
リリースされていてBillboard Hot 100では最高位11位。
Track | Title | Written by |
A | Woodstock | Joni Mitchell |
B | Helpless | Neil Young |
B面は、
ニール・ヤングが書いた『Helpless』。
どう聴いてもボブ・ディランの『Knockin’ on Heaven’s Door』みたいだけど、
あれは1973年のリリースだからヤングの方が早い。
Joni Mitchell: Woodstock
この『Woodstock』は、
ジョニ・ミッチェルが書いたもの。
当時一緒に住んでいたグラハム・ナッシュから、
ウッドストック・フェスティバルの話を聞いてつくったらしい。
1970年『Ladies of the Canyon』収録で、
シングルでも『Big Yellow Taxi』のB面でリリースされている。
Track | Title | Written by |
A | Big Yellow TaxiWoodstock | Joni Mitchell |
B | Woodstock | Joni Mitchell |
Jimi Hendrix: Woodstock
2018年にリリースされたジミ・ヘンドリックスのアルバム『Both Sides of the Sky』に、
この『Woodstock』が収録されている。
これはCSNYがまだこの曲を吹き込む以前のパフォーマンスらしく、
多少は最終形のアレンジに影響を与えたかもしれない。
この曲では、
ヘンドリックスはベースを弾いている。
スティーヴン・スティルスがオルガンとヴォーカルで、
ドラムはバディ・マイルズ。
結構いい感じだけど、
ヘンドリックスのギターが聴こえれないのは残念な感じだけど案外なくて正解なのかもしれない。
Norman Greenbaum: Spirit In The Sky
3曲目に流れるのがノーマン・グリーンバウム、
1969年のシングル『Spirit In The Sky』。
Track | Title | Written by |
A | Spirit In The Sky | Norman Greenbaum |
B | Milk Cow | Norman Greenbaum |
書いたのは、
グリーンバウム自身。
When I die and they lay me to rest
―Norman Greenbaum: Spirit In The Sky
Gonna go to the place that’s the best
When I lay me down to die
Goin’ up to the spirit in the sky…
死んだら葬られ
最高の場所へ行くのさ
死んでしまったら
魂は空の彼方の神様のとこに行くんだ…
Billboard Hot 100では、
3位が最高位。
B面も、
グリーンバウムが書いた『Milk Cow』。
デモを聴くとわかるけど、
この曲に魔法をかけたのはアレンジだ。
この曲は、
1969年のアルバム『Spirit in the Sky』のタイトル・トラック。
このアルバムを聴くとわかるけど、
やはりこの曲だけ魔法がかかっているような気がする。
そして、
ワン・ヒット・ワンダーが誕生したわけだ。
Bauhaus: Spirit in the Sky
バウハウスが、
1983年にカヴァーしているのが結構良い。
元々はファン・クラブのメンバーに配布されたシングルだったらしく、
その時は限定350枚プレスされたらしい。
その後、
2014年にリリースされた『Singles』に収録されている。
Eddie Holman: Hey There Lonely Girl
4曲目に流れるのがエディ・ホールマン、
1969年のシングル『Hey There Lonely Girl』。
Track | Title | Written by |
A | Hey There Lonely Girl | E. Shuman, L. Carr |
B | It’s All In The Game | Gen. Chas. Dawes, C. Sigman |
書いたのは、
リオン・カーとアール・シューマン。
Hey there lonely girl, lonely girl
―E. Shuman, L. Carr: Hey There Lonely Girl
Let me make your broken heart like new…
ねえそこのロンリー・ガール
きみの傷ついたハートを新しくさせてくれないか…
Billboard Hot 100では、
2位が最高位。
ファルセット・ヴォイスが、
なかなか心地良い1曲。
実際はどんな声なの?と思ったら、
B面『It’s All In The Game』は普通の声で唄われている。
こちらは、
チャールズ・G・ドーズとカール・シグマンが書いた曲。
このシングルA.B面共に、
オリジナルではなくてカヴァー。
Ruby & the Romantics: Hey There Lonely Boy
ホールマンA面『Hey There Lonely Girl』のオリジナルは、
ルビー・アンド・ザ・ロマンティクス1963年のシングル。
Track | Title | Written by |
A | Hey There Lonely Boy | Shuman-Carr |
B | Not a Moment Too Soon | Hilliard-Garson |
ただタイトルは『Hey There Lonely Boy』で、
女の子が男の子に語り掛ける曲。
Billboard Hot 100では、
27位が最高位。
Tommy Edwards: It’s All In The Game
ホールマンB面の『It’s All In The Game』は、
1951年トミー・エドワーズのシングルのカヴァー。
Track | Title | Written by |
A | It’s All In The Game | Dawes, Sigman |
B | All Over Again | Edwards |
BillboardのMost Played by Jockeysで、
最高位18位になっている。
この『It’s All In The Game』の曲は第30代アメリカ合衆国副大統領であり、
1925年ノーベル平和賞共同受賞者のチャールズ・G・ドーズが書いた『Melody in A Major』。
これは1921年にフリッツ・クライスラーのヴァイオリン、
カール・ラムソンのピアノで吹き込まれてリリースされているのが最初
その曲に、
後からカール・シグマンが歌詞を付けてエドワーズが最初に唄っている。
B面は、
エドワーズ自身が書いた『All Over Again』。
おまけ
世界の平和を唄う『Everyday People』、
人間性回復のための愛と平和と音楽の祭典を唄う『Woodstock』。
死んだら最高の場所に行くんだと唄う『Spirit In The Sky』、
傷ついた心を持つ女の子に優しく寄りそう『Hey There Lonely Girl』。
井上陽水の『傘がない』という曲の歌詞が、
ナゼか思い浮かぶ。
都会では 自殺する若者が増えている
―井上陽水: 傘がない
今朝来た新聞の片隅に書いていた
だけども問題は今日の雨 傘がない…
我が国の将来の問題を誰かが深刻な顔をしてしゃべっていようが、
都会で自殺する若者が増えていようが問題は傘がないこと。
君に会いに行かなくちゃいけないのに、
今日は雨が降っていて傘がないこと…。
この曲のキッカケは、
後楽園球場で陽水が観たグランド・ファンク・レイルロードの『Heartbreaker』の演奏。
よく使われるコード進行だからパクリとは言わないけど、
まあ確かによく似ている。
Once I had a little girl, sometimes I think about her
―Mark Farner: Heartbreaker
Buddy, you know she’s not really there…
かつてオレには可愛い女のコがいたんだ 時々彼女のことを考えるよ
でもなあ相棒 本当は彼女はいやしなかったんだ…
ジューク・ボックスに次々にかかるレコード 関連 Playlist
最後に、
ジューク・ボックスに次々にかかるレコードと関連曲のプレイリストを。
22曲、
1時間20分。
01 Sly & The Family Stone: Everyday People
02 Sly & The Family Stone: Sing A Simple Song
03 Aretha Franklin: Everyday People
04 Aretha Franklin: You Can’t Take Me For Granted
05 Crosby, Stills, Nash & Young: Woodstock
06 Crosby, Stills, Nash & Young: Helpless
07 Bob Dylan: Knockin’ on Heaven’s Door
08 Joni Mitchell: Woodstock
09 Joni Mitchell: Big Yellow Taxi
10 Jimi Hendrix: Woodstock
11 Norman Greenbaum: Spirit In The Sky
12 Norman Greenbaum: Milk Cow
13 Bauhaus: Spirit in the Sky
14 Eddie Holman: Hey There Lonely Girl
15 Eddie Holman: It’s All In The Game
16 Ruby & the Romantics: Hey There Lonely Boy
17 Ruby & the Romantics: Not A Moment Too Soon
18 Tommy Edwards: It’s All In The Game
19 Tommy Edwards: All Over Again
20 Fritz Kreisler – Piano Accompaniment Carl Lamson: Melody in A Major
21 井上陽水: 傘がない
22 Grand Funk Railroad: Heartbreaker
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