風の歌を聴け

ジョニー・アリディのレコードが無いのか、と僕に訊ねた。「人気がないからさ。」と僕は言った。「じゃあフランス人歌手では誰が人気ある？」「アダモ。」「ありゃベルギー人だ。」「ミッシェル・ポルナレフ。」「糞だ。」【風の歌を聴け】で流れる音楽たち。

暑い一日になりそうだった。周りの家並みはまだ静かに眠り、聴こえるものと言えば時折の電車のレールのきしみと、微かなラジオ体操のメロディーといったところだ。…今回の村上春樹【風の歌を聴け】で流れる音楽たちは、『微かなラジオ体操のメロディー』だ。

正面の壁からはモーツァルトの肖像画が臆病な猫みたいにうらめし気に僕をにらんでいた。…今回の村上春樹【風の歌を聴け】で流れる音楽たちは『モーツァルト』。ただ『モーツァルトの肖像画』であって『モーツァルトの音楽』が出てくるわけではないんだけど。

僕はカウンターの中にあるポータブル・テレビの「ルート66」の再放送を眺めながらそう答えた…今回の村上春樹【風の歌を聴け】で流れる音楽たちはTVドラマだけど、ネルソン・リドルが書いたそのドラマ用のオリジナル曲『Route 66 Theme』。

『風の歌を聴け』という最初の小説を書いたとき、もしこの本を映画にするなら、タイトルバックに流れる音楽は『ムーンライト・セレナーデ』がいいだろうなとふと思ったことを覚えている…。というわけで実際に小説の中では流れていないけど最初はこの曲から。