村上RADIO
こんばんは、
―村上RADIO: 〜RUN&SONGS〜
村上春樹です。
ラジオに出演するのは今回が初めてなので、
僕の声を初めて聴いたという方もきっとたくさんいらっしゃると思います。
始めまして。
この番組は、
僕の好きな曲をかけて、
曲と曲との間に少しおしゃべりもします。
リスナーからいただいた質問にもお答えして、
皆さんと一緒に楽しくひと時を過ごせればと思います。
TOKYO FMで『村上RADIO』が始まったのは、
2018年の8月5日(日)19:00のこと。
最初は単発番組としての放送だった気がするけど、
未だにこの番組は続いている。
これはちょっと、
想定外だった。
でも、
きっと本人が楽しめる番組だからずっと続いているんだろう。
多分あまり制約なんかなく自分が選んだ音楽をかけて、
好きにおしゃべりしているとしたらそれは楽しいに違いない。
なかなか、
ステキなおもちゃを手に入れたようなものだ。
それで、
この番組で流れた音楽を関連曲も含めていろいろと聴いていこうというのがこのカテゴリー。
この番組ではいろんなジャンルの曲が流れるから、
そこから勝手に派生させた関連曲まで聴くとなるとかなり様々な音楽を聴くことができるわけで。
雑聴とは言え、
偏った聴き方をしている身としては音楽の幅が拡がるから自分にとっては良い試みになりそうだ。
というわけで、
始めてみよう。
RUNS&SONGS – 僕が走っているときに聴いている音楽 by 村上春樹 –
それで第1回目は、
村上RADIO 〜RUN&SONGS〜。
僕はジョギングするときにいつもiPodで音楽を聴いていますが、
―村上RADIO: 〜RUN&SONGS〜
一台に1000~2000曲入っていて、
それを7台ぐらい持ってます。
今日はそのラインナップの中から、
何曲かお聴かせしたいと思います。
というもの。
iPodを7台くらい持っているというのは、
ちょっと普通の人との感覚のズレを感じるところだけど。
でも考えたら、
レコードやカセット・テープをたくさん持っていると思えば案外普通なのかもしれない。
だって、
数台で済んじゃうんだからね。
テープやレコードじゃあ、
そうはいかない。
Madison Time
さて、
この放送の第1回目。
先ず流れてきたのは、
ドナルド・フェイゲン・ウィズ・ジェフ・ヤング&ザ・ヤングスターズの『Madison Time』。
結局この曲は、
このあと番組のテーマ曲になっている。
ドナルド・フェイゲンがこの曲をライブ録音したのは1991年なんだけど、
どこでどう思い違いをしたのか2003年頃と言っていた(次回で訂正していたけど)。
Live at the Beacon
曲は1991年リリースのライヴ・アルバム、
二ューヨーク・ロック&ソウル・レビュー『Live at the Beacon』収録曲。
マーティン・スコセッシ監督が2006年にストーンズの映画『Shine a Light』を撮った、
マンハッタンのアッパー・ウエスト・サイドにあるビーコン・シアターでのライブ。
トム・シラーが出演者を紹介した後、
この曲がフワッと始まる。
オープニングにしては、
なんとも軽い感じの曲だなあと思ったけど何回か聴いているうちに慣れてくる。
ちなみにアルバム最後でこの曲はもう1度流れることになるんだけれど、
番組の最後にこれが流れることはもちろんなかった。
The New York Rock and Soul Revue
ところで、
このニューヨーク・ロック&ソウル・レビュー。
リビー・タイタスがプロデュース・宣伝した、
一連のコンサートから発展した音楽プロジェクトだね。
彼女は、
元レヴォン・ヘルムの奥さん。
バンド・リーダーは、
この時はまだタイタスの旦那さんだったドナルド・フェイゲン。
ここではフィービー・スノウやマイケル・マクドナルドやボズ・スキャッグス、
エディ・ブリガティやデヴィッド・ブリガティやチャールズ・ブラウンなどが出演している。
Orignal by Ray Bryant Combo
この曲のオリジナルは、
1960年シングル・リリースのレイ・ブライアント・コンボ。
アウター・スリーブには、
表裏ステップの解説イラストが載っている。
そして、
表には『It’s the swingingest-the zaniest-it’s the most sensational new dance in the country』。
裏には、
『If you slip, if you slide, if you stumble, if you fall, don’t fret-you may found another “Madison” step』。
インナー・スリーブにも、
同じようにステップの解説イラストが付いている。
Track | Title | Performer | Written by |
A | The Madison Time – Part I | Ray Bryant Combo | Ray Bryant, Eddie Morrison |
B | The Madison Time – Part Ⅱ | Ray Bryant Combo | Ray Bryant, Eddie Morrison |
書いたのは、
ジャズ・ピアニストのレイ・ブライアント。
ボルチモアのディスク・ジョッキー、
エディ・モリソンのコールがなかなか良い感じだ。
A/B面共に同じ曲だけど、
A面はそのコールが入ったものでB面はコール無しのインストゥルメンタル。
- ベース – トミー・ブライアント
- ドラムズ – ビル・イングリッシュ
- ピアノ – レイ・ブライアント
- テナー・サックス – バディ・テイト
- トロンボーン – アービー・グリーン
- トランペット – ハリー・エディソン
ビルボード・ホット100チャートでは、
最高30位になっている。
It’s Madison time, hit it
―Ray Bryant Combo – Calls by Eddie Morrison: The Madison Time
You’re looking good
A big strong line…
さあマディソンの時間だ 行くぜ
調子良さそうじゃないか
バッチリなラインだ…
おまけ
ところでマディソンは、
シングルのスリーブにイラストがあったようにダンスのこと。
マディソン・ダンス
そもそも、
この『The Madison Time』って曲。
1950年代後半~1960年代半ば、
かなり流行った『マディソン・ダンス』を取り上げたもの。
オハイオ州コロンバスとかボルチモアの黒人居住区の大通りとか、
デトロイトの舞踏会とかクリーブランドのバーとかよくありがちだけど発祥の説はいろいろ。
実際のダンスは決められたステップを交えた、
規則的な前後のパターンを特徴とするラインダンス。
映画 Hairspray の中のマディソン・ダンス
映画の中で、
このマディソン・ダンスが取り上げられているシーンがある。
例えば、
ジョン・ウォーターズ監督1988年の映画『Hairspray』。
簡単に内容を言うとリッキー・レイク演じるトレイシー・ターンブラッドが、
地元のテレビ番組でダンサーとしてスターになり人種差別と闘う様子を描いたもの。
あの中では、
まさにこのダンスを大勢で踊るシーンがある。
ここでダンスのバックに流れているのは、
オリジナルのレイ・ブライアント・コンボのもの。
映画 Bande à part の中のマディソン・ダンス
1962年にはフランスにもこのダンスのブームがやってきて、
急速にティーン・エイジャーの間で流行っていったらしい。
それでかどうかはわからないけど、
ゴダール監督1964年『Bande à part(はなればなれに)』でもマディソン(らしきもの?)が登場。
クロード・ブラッスールにサミー・フレイ、
そしてアンナ・カリーナの3人。
ミシェル・ルグランがこの映画のために作曲した音楽に合わせて、
突然ダンスを踊り出すシーンは印象的だしカッコいい。
映画の中でダンスの名前は出てこないが、
俳優たちは後にこれをマディソン・ダンスと呼んでいたはずだ。
このシーンで途切れ途切れに流れるルグランの曲、
これが結構良い感じ。
流れていたものとは違うけど、
レ・カプチーノがこの曲を取り上げている。
2003年、
フランス・デビューCDアルバム『Ultra Kitsch (de luxe) Vol.1』の収録曲。
マディソン・ダンスを取り上げた他の曲1 Al Brown’s Tunetoppers
このダンスを取り上げた曲は、
他にもいろいろある。
有名なのは、
アル・ブラウンズ・チューントッパーズ1960年の『The Madison』あたりか。
ダンス・コールは、
クッキー・ブラ。
ビルボードのチャートでは、
最高位23位になっている。
同じ年、
マディソンを踊る他の曲を収録したアルバム『The Madison Dance Party』もリリースしている。
マディソン・ダンスを取り上げた他の曲2 Dicky Doo & the Don’ts
あとは、
ディッキー・ドゥー&ザ・ドンツ『The Big M, Part 1・2』。
こちらも、
同じ1960年に『Madison And Other Dances』というアルバムを出している。
マディソン・ダンスを取り上げた他の曲3 Les Cappuccino
Bande à partのところで出てきた、
レ・カプチーノ『Ultra Kitsch (de luxe) Vol.1』は他にもマディソン絡みの収録曲がある。
音だけ聴いていると、
日本のバンドとは思えない感じでハモンド・オルガンがとにかく気持ち良い。
Madison Time 関連 Playlist
というわけで番組で流れた『Madison Time』と、
流れなかったけど関連曲のプレイリストを最後に。
11曲、
32分27秒
01 Tom Schiller: Intro
02 Donald Fagen With Jeff Young & The Youngsters: Madison Time
03 Donald Fagen With Jeff Young & The Youngsters: Madison Reprise
04 Bryant Combo – Calls by Eddie Morrison: The Madison Time Part 1
05 Bryant Combo: The Madison Time Part 2
06 Les Cappuccino: Bande À Part
07 Al Brown’s Tunetoppers Featuring Cookie Brown: The Madison
08 Dicky Doo & the Don’ts: The Big M, Part 1
09 Dicky Doo & the Don’ts: The Big M, Part 2
10 Les Cappuccino: Madison Agent
11 Les Cappuccino: Madison D’Anna
Comment Feel Free