マントバーニのイタリア民謡

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マントバーニのイタリア民謡の流れるホテルの小さなバー

夕方になって日が翳り始める頃、
僕たちはプールから出て、
マントバーニのイタリア民謡の流れるホテルの小さなバーに入り、
冷たいビールを飲んだ。

―村上春樹,風の歌を聴け

マントバーニのイタリア民謡、
ここに出てこなければまず聴くことがない類の音楽だ。

アンヌンツィオ・パオロ・マントヴァーニは、
イギリスの指揮者であり編曲者。

ストリングスを上手く駆使した、
イージーリスニングの第一人者の一人。

イージーリスニングって和製英語のようだけど、
ちゃんとした英語だったりする。

Italian Fantasia

ここに出てくる『マントバーニのイタリア民謡』は、
イタリア民謡メドレーの『イタリアの幻想(Italian Fantasia)』だろうか?

1961年リリース、
マントバーニ楽団のアルバム『Italia mia』に収録されている。

メドレーで流れる曲は、
6曲。

  • Tarantella
  • ‘O sole mio
  • A Frangesa
  • Santa Lucia
  • Maria Marì
  • Funiculì funiculà

Tarantella

これは、
マントバーニ自身が書いた曲。

元々タランテラはナポリの急速な3/8または6/8拍子の舞曲で、
その語源は港町タラントと言われている。

毒蜘蛛タランチュラからきた、
という説もある。

多くの作曲家が、
このタランテラを作曲している。

メンデルスゾーン: 無言歌集 第8巻 タランテッラ Op.102-3 U 195 ハ長調

ピアノ独奏のための作品集『無言歌集』は、
作品19・30・38・53・62・67・85・102 の全8巻48曲ある。

この『タランテッラ』は第8巻 作品102の3曲目で、
ハ長調 プレスト。

作曲年代が確認できる25曲の中の最後期の曲で、
1845年12月12日作曲。

ちなみに表題は、
作曲家自身が付けたものではない。

ショパン: タランテラ 変イ長調 Op.43

タランテラ 変イ長調 作品43は、
ショパンが1841年に作曲して同年に出版されたピアノ独奏曲。

ロッシーニの歌曲集『音楽の夜会』の第8曲で、
1835年に作曲されたものを元にして書かれたもの。

ドビュッシー: スティリー風タランテッラ(舞曲)

ドビュッシー初期のピアノ作品で、
1890年に作曲されている。

最初の出版では『スティリー風タランテラ』だったが、
1903年の改訂では『舞曲』に変更されている。

後にこの曲は、
ラヴェルによってオーケストラ編曲がされている。

ラフマニノフ: 2台のピアノのための組曲 第2番 Op.17

2台のピアノのための組曲第2番作品17は、
セルゲイ・ラフマニノフのピアノ・デュオ曲。

1900年12月から1901年4月にかけて作曲されたもので、
初演は1901年11月24日モスクワでラフマニノフとアレクサンドル・ジロティのピアノで行われた。

4つの楽章で構成されていて、
その第4楽章がタランテラ。

プレスト ハ短調、
8分の6拍子。

ストラヴィンスキー: 組曲 プルチネルラ No.4 タランテラ

ストラヴィンスキーが1919年~20年にかけて、
バレエ・リュス(ロシア・バレエ団)の主催者ディアギレフの依頼により作曲したもの。

バレエ音楽(全曲版)と、
組曲がある。

1920年パリ・オペラ座、
バレエ・リュスの公演が初演。

その時の指揮はエルネスト・アンセルメ、
衣装舞台セットのデザインはパブロ・ピカソ。

台本と振付は、
レオニード・マシーンが担当している。

‘O sole mio

1890年に書かれたナポリ民謡で、
ジョヴァンニ・カプッロ / エドゥアルド・ディ・カプア / アルフレード・マッツッキの作品。

日本語だと『私の太陽』になるのかな?
ちなみに『’O』は冠詞で『おお私の太陽』となるわけじゃあない。

Elvis Presley: It’s Now or Never

1960年、
プレスリーが歌詞を変えて『It’s Now or Never』というタイトルでシングル・リリース。

B面は、
ドック・ポマスとモート・シューマンB面『A Mess of Blues』。

TrackTitleWritten by
AIt’s Now or NeverAaron Schroeder – Wally Gold
BA Mess of BluesDoc Pomus-Mort Schuman
Label:RCA Victor Catalgue:47-7777 Date:Mar 1960

Billboard Hot 100では、
最高位7位。

Luciano Pavarotti / Bryan Adams: O Sole Mio

面白い組み合わせで唄われるのが、
ルチアーノ・パヴァロッティとブライアン・アダムス。

1995年リリース、
パヴァロッティ&フレンズの『Pavarotti & Friends 2』の収録曲。

1994年9月13日に開催されたチャリティー・コンサートのライヴで、
収益は国際援助機関ウォー・チャイルドや国連難民高等弁務官事務所等人道支援団体に寄付された。

A Frangesa

この曲は、
マリオ・パスカーレ・コスタが書いて1894年に発表されたナポリ語の歌。

カフェ・コンサートの歌手、
シアントーザのアルマンダリーの為に書かれたもの。

Gina Lollobrigida: A Frangesa

1955年ロバート・Z・レナード監督の映画『La donna più bella del mondo』の中で、
主演のジーナ・ロロブリジーダがこれを唄っている。

Santa Lucia

この曲は、
ナポリ湾のサンタ・ルチア地区の船頭らによって唄われた伝統的なナポリ民謡。

テオドロ・コットラウが、
1849年にイタリア語に翻訳して出版している。

Enrico Caruso: Santa Lucia

古い吹き込みだと、
ナポリ生まれのテノール歌手エンリコ・カルーソーの1916年のものがある。

Elvis Presley: Santa Lucia

エルヴィス・プレスリーが、
この曲を唄っている。

1964年の映画『Viva Las Vegas』のために吹き込まれ、
アルバム『Elvis for Everyone!』に収録されている。

Maria Marì

ヴィンチェンツォ・ルッソの詩にエドゥアルド・ディ・カプアが音楽を付け、
1899年に出版されたナポリの歌。

Comedian Harmonists: Ah Maria Mari

古い吹き込みだと、
1930年コメディアン・ハーモニストのものがある。

Funiculì funiculà

1880年、
ヴェスヴィオ山の山頂までの登山鉄道(フニコラーレ)が敷設された。

当初利用者が少なく運営会社が宣伝曲を作ることを考え、
ルイージ・デンツァとジュゼッペ・トゥルコがこの曲を書いた。

世界最古のコマーシャルソング、
ともいわれる。

R.シュトラウス: 交響的幻想曲『イタリアから』作品16, TrV 147

リヒャルト・ストラウスがこの曲を古くから伝わる民謡と勘違いして用いたため、
演奏されるたびにシュトラウスはデンツァに著作権料を支払う破目となったことは有名。

4つの楽章から成っていて、
第4楽章『ナポリ人の生活』Finale Allegro molto ソナタ形式に出てくる。

おまけ

このバーで『鼠』が『僕』に、
世の中にはどうしようもないこともあると言う。

世の中にはどうしようもないこともある、
それは間違いない。

そのことを語らせるコンテストでもあれば、
多分ボクはチャンピョンにはならなくてもかなり好成績を収められそうな気がする。

どうしようもないことっていうのは、
本当にどうしようもない。

ただどうしようもなさそうに見える多くは、
どうにかできたりするものだ。

可能性が1%もないものもあれば、
五分五分のものだってある。

五分五分もあれば、
あとは自分次第。

変えられるものを変える勇気と変えられないものを受け入れる冷静さ、
そして変えられるものと変えられないものとを見分ける賢さ。

この変えられるものと変えられないものとを見分ける賢さ、
これがあれば良いのだけれど。

マントバーニのイタリア民謡 関連 Playlist

最後に、
マントバーニのイタリア民謡関連曲のプレイリストを。

16曲、
59分47秒。

01 Mantovani and His Orchestra: Italian Fantasia Medley
Tarantella; O Sole Mio; A Frangesa; Santa Lucia; Maria Mari!; Funiculi Funicula
02 メンデルスゾーン: 無言歌集 第8巻 タランテッラ Op.102-3 U 195 ハ長調
  ピアノ: ダニエル・バレンボイム
03 ショパン: タランテラ 変イ長調 Op.43
  ピアノ: ウラディミール・アシュケナージ
04 ロッシーニ: 音楽の夜会 第8曲 ダンツァ
  メゾ・ソプラノ: チェチーリア・バルトリ / ピアノ: ジェームズ・レヴァイン
05 ドビュッシー: スティリー風タランテッラ(舞曲)
  ピアノ: フランソワ・ジョエル・ティオリエ
06 ラヴェル編曲ドビュッシー: スティリー風タランテッラ(舞曲)
  指揮: アルトゥーロ・トスカニーニ / NBC交響楽団
07 ラフマニノフ: 2台のピアノのための組曲 第2番 Op.17 第4楽章 タランテラ
  ピアノ: ウラディミール・アシュケナージ / アンドレ・プレヴィン
08 ストラヴィンスキー: 組曲 プルチネルラ No.4 タランテラ
  指揮: ピエール・ブーレーズ / ニューヨーク・フィルハーモニック
09 Elvis Presley: It’s Now or Never
10 Elvis Presley: A Mess of Blues
11 Luciano Pavarotti / Bryan Adams: O Sole Mio
12 Gina Lollobrigida: A Frangesa
13 Enrico Caruso: Santa Lucia
14 Elvis Presley: Santa Lucia
15 Comedian Harmonists: Ah Maria Mari
16 R.シュトラウス: 交響的幻想曲『イタリアから』作品16, TrV 147 第4楽章
  指揮:リッカルド・ムーティ / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
17

村上春樹: 風の歌を聴け で流れる他の音楽たち

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