僕にビーチ・ボーイズのLPを貸してくれた女の子のだ。
三日間、
―村上春樹,風の歌を聴け
僕は彼女の電話番号を捜しつづけた。
僕にビーチ・ボーイズのLPを貸してくれた女の子のだ。
ビーチ・ボーイズのLPは、
既に出てきている。
ビールを飲みながら一人で「カリフォルニア・ガールズ」を聴いた。
僕は家に帰り、
―村上春樹,風の歌を聴け
ビールを飲みながら一人で「カリフォルニア・ガールズ」を聴いた。
同じように、
ビーチ・ボーイズの『California Girls』も出てきている。
おまけ
ビーチ・ボーイズのLP『Summer Days (and Summer Nights!!)』を買った『僕』は、
そのLPを貸してくれた女の子の電話番号を捜しつづけた。
僕と彼女を結ぶラインの最後の端
もちろん、
女の子にLPをプレゼントする為にだ。
でもわかったことと言えば、
大部分のクラス・メートが彼女が存在していたことさえ覚えていなかったこと。
何故だかわからないが『僕』とは口も聞きたくない、
というクラスメートがいたこと。
女の子が、
山の手にある二流の女子大の英文科に進学したこと。
今年の3月、
病気の治療という理由で休学ではなく退学届けを出したこと。
住んでいた学校に近い下宿屋を、
春に出たっきり行く先はわからないこと。
そうやって『僕と彼女を結ぶラインの最後の端』は、
プツリと切れてしまう。
1970年頃ならではの話で、
今だったら個人情報をここまで決して辿ることは出来ないだろう。
でも逆に、
今なら違う辿り方でもっと違った情報を得られるかもしれない。
いずれにしてもラインは途中でプツリと切れてしまい、
『僕』はビールを飲みながら一人『カリフォルニア・ガールズ』を聴くことになる。
もちろん、
この時代であってもまだまだやりようはあったはずだ。
本当は『僕と彼女を結ぶラインの最後の端』はプツリと切れてしまったわけじゃあない、
と思う。
瞬間的具体的努力をしてみて、
自らラインを切っただけのことだ。
そして家に帰り、
ビールを飲みながら一人『カリフォルニア・ガールズ』を聴くのだ。
永遠につづくイノセンス
結局のところ、
―村上春樹: 神話力、1963、1983、そして
今にして思えば、
ブライアン・ウィルソンの音楽が僕の心を打ったのは、
彼が「手の届かない遠い場所」にあるものごとについて
真摯に懸命に歌っていたからではないだろうか。
燦々と太陽の光の降りそそぐマリブ・ビーチ、ビキニを着た金髪の少女たち、
ハンバーガー・スタンドの駐車場にとまったぴかぴかのサンダーバード、
サーフ・ボードを積んだ木貼りのステーション・ワゴン、
遊園地のようなハイスクール、
そして何よりも永遠につづくイノセンス。
それは十代の少年にとっては(あるいはまた少女にとっても)まさに夢の世界だった。僕らはちょうどブライアンと同じようにそれらの夢を見て、
ブライアンと同じようにその寓話を信じていた。
永遠につづくイノセンス、
なんてものは結局はなくて。
それは夢であり、
寓話であって。
それでも第二章はあるし、
鎮魂すべきものを抱えながら生き延びるのだ。
The Beach Boys 関連 Playlist
ビーチ・ボーイズ、
おもてベスト10を並べるとこんな感じ(順番は順位じゃあなくて時系列)。
もちろん『California Girls』は入っている、
うらベスト10は…まあいずれ。
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