それは「ミッキー・マウス・クラブの歌」だった。
家に変える途中、
―村上春樹,風の歌を聴け
ずっと口笛を吹いていた。
それは何処かで聴いたことのあるメロディーだったが、
題名はなかなか浮かんではこなかった。
ずっと昔の唄だ。
僕は海岸通りに車を停め、
暗い夜の海を眺めながらなんとか曲名を思い出そうと努力してみた。
それは「ミッキー・マウス・クラブの歌」だった。
こんな歌詞だったと思う。
「みんなの楽しい合言葉、MIC・KEY・MOUSE。」
確かに良い時代だったのかもしれない。
The Mouseketeers: Mickey Mouse Club March
ミッキー・マウス・クラブの歌、
Mickey Mouse Club March。
アメリカのABCテレビネットワークで、
1955-1959年に放映されたテレビ番組『The Mickey Mouse Club』の主題歌。
番組の司会者、
ジミー・ドッドによって書かれた。
この人って、
ウォルト・ディズニーに作詞家として雇われたギタリスト兼ミュージシャンだったんだよね。
Who’s the leader of the club
―Jimmie Dodd,Mickey Mouse Club March
That’s made for you and me
M-I-C-K-E-Y M-O-U-S-E
君と僕のために作られた
クラブのリーダーは誰だい?
ミッキー・マウスさ!
Cover by Julie London
ジュリー・ロンドンが、
1967年のアルバム『Nice Girls Don’t Stay for Breakfast』でこの曲をカヴァーしている。
全く違うアプローチで、
スモーキー・ヴォイスでしっとりと唄われるこのヴァージョンはとても良い。
ただこれを聴くと、
元気なオリジナルを逆に聴きたくもなる。
映画『Full Metal Jacket』で流れるミッキー・マウス・クラブの歌
この曲を聴くといつも思い出すのが、
1988年スタンリー・キューブリック監督の『Full Metal Jacket』だ。
映画の最後にフエの戦いでアメリカ海兵隊員が、
銃を構えながら瓦礫と化した街を退場する際に『MIC・KEY・MOUSE…』と唄いながら進んでいく。
そして、
そこにマシュー・モディーン演じるジョーカーことJ・T・デイビス二等兵/軍曹の独白が重なる。
My thoughts drift back to erect-nipple wet dreams
―Full Metal Jacket scene
about Mary Jane Rottencrotch
and the great homecoming-fuck fantasy.
I am so happy that I am alive in one piece and short.
I am in a world of shit,
yes,
but I am alive.
And I am not afraid
オレがぼんやりと考えてたのは
馴染のガール・フレンドのメアリー・ジェーンの固くなった乳首の淫らな夢
そして帰還祝いの大乱交だ
五体満足で生き延びられてオレは幸せだ
あと少しで帰還だ
そう…オレはクソの世界にいる
でもオレは生きている
そしてオレにはもう恐れるものは何もない
教官は殺され仲間は自殺してしまい、
親友を亡くして初めて人を葬り去ったジョーカー。
確かに恐れるものは、
もう何もないかもしれない。
実のところ本当の恐怖は、
これから始まるはずだ。
そしてその恐怖は、
全く質の違うものになるだろう。
映画『Full Metal Jacket』で流れる他の音楽たち
キューブリックは1962~68年各年のBillboardのヒット・リストを確認し、
多くの曲を検討して挿入曲を選んでいる。
Abigail Mead & Nigel Goulding: Full Metal Jacket
これはキューブリックの娘ヴィヴィアンが、
アビゲイル・ミードという名で書いている。
これ以外にも、
この映画の音楽を担当している。
Johnny Wright: Hello Vietnam
ジョニー・ライト、
1965年のシングル。
トム・T・ホールがかいたもので、
ベトナム戦争を支持する内容になっている。
The Dixie Cups: Chapel Of Love
ディキシー・カップス、
1964年のデビュー・シングル『Chapel Of Love』。
ジェフ・バリーとエリー・グレニッチのソングライター・チームに、
フィル・スペクターが加わって書かれたもの。
Sam The Sham & The Pharaohs: Wooly Bully
サム・ザ・シャム・アンド・ザ・ファラオズ、
1965年の『Wooly Bully』。
バンドのフロントマン、
ドミンゴ・「サム」・サムディオによって書かれた。
Chris Kenner: I Like It Like That
クリス・ケナー、
1961年の『I Like It Like That』。
クリス・ケナーと、
アレン・トゥーサン書いた曲。
Nancy Sinatra: These Boots Were Made For Walking
ナンシー・シナトラ、
1965年の『These Boots Were Made For Walking』。
書いたのは、
リー・ヘイズルウッド。
The Trashmen: Surfin’ Bird
ザ・トラッシュメン 、
1963年の『Surfin’ Bird』。
書いたのは、
アル・フレイジャー / カール・ホワイト / ジョン・ハリス / ターナー・ウィルソン・ジュニア。
この曲は、
ザ・リビングトンズの『The Bird’s the Word』と『Papa-Oom-Mow-Mow』が元うただろう。
The Rolling Stones: Paint It Black
ザ・ローリング・ストーンズ、
1966年の『Paint It Black』。
これは、
エンド・クレジットで流れた。
おまけ
この『ミッキー・マウス・クラブの歌』を、
口笛で吹いていたとする。
そのタイトルがなかなか浮かんでこない、
なんていうことがあるだろうか?
努力しなければ、
そう簡単に思い出せないような曲ではないように思う。
もしかすると良い時代もその時代の曲も、
そう簡単に思い出せないくらい遥か昔々のことという意味なのかもしれないけど。
ところで、
なぜ『MIC・KEY・MOUSE』となっているんだろう?
まあ確かに唄う際に、
MIC・KEY・MOUSEと区切るからという単純な理由かもしれない。
でも、
MICはさて置いて『鍵は鼠』という捉え方もある。
じゃあMICは何なの?と訊かれても、
今のところ思い浮かびはしないけど。
ミッキー・マウス・クラブの歌 関連 Playlist
それじゃあ最後に、
ミッキー・マウス・クラブの歌とそのある意味関連曲のプレイリストを。
何だか映画『Full Metal Jacket』で流れた音楽たち、
みたいになってしまったけど。
01 The Mouseketeers: Mickey Mouse Club March
02 Julie London: Mickey Mouse March
03 Abigail Mead And Nigel Goulding: Full Metal Jacket
04 Johnny Wright: Hello Vietnam
05 The Dixie Cups: Chapel Of Love
06 Sam The Sham & The Pharaohs: Wooly Bully
07 Chris Kenner: I Like It Like That
08 Nancy Sinatra: These Boots Were Made For Walking
09 The Trashmen: Surfin’ Bird
10 The Rivingtons: The Bird’s the Word
11 The Rivingtons: Papa-Oom-Mow-Mow
12 The Rolling Stones: Paint It Black
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